2009年12月09日
民主憎けりゃ財政出動まで憎し?
産経新聞は、ゴミ溜めのような新聞業界にあって、最もまともな新聞だと思います。
立ち位置としては「やや保守寄りの中立」であり、ナベツネ支配の読売新聞よりもはるかに好感が持てます。
ただし、なまくらが「おや?」と思うスタンスも幾つかあります。
一つは「親米」を追求し過ぎて自主独立の気概を失くしている事、もう一つは「小泉構造改革マンセー」な点です。
何でもかんでも「自己責任」論を展開し、「小さな政府」、「規制緩和」、「官から民へ」という米共和党的発想を紙面にぶちまける姿は、「親米紙ここにあり」と言っているようで、正直辟易する事もあります。
先日も、このような連載記事を臆面もなく掲載していました。
【デフレの恐怖】(下)日本経済は「低体温症」 頼みは構造改革と成長戦略
(前略)
■続く物価下落
「日本経済が陥っている状況は、まさに低体温症だ」と話すのは、日本総合研究所の湯元健治理事だ。
経済で体温と形容される物価は、このところ下落を続けている。9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2・3%の下落で、7カ月連続の前年割れだ。
「先進国では2~3%成長するのが平熱だが、日本はせいぜい1~2%で、悪ければマイナスになる。現状では恒常的な物価下落の状況にあるうえ、慢性的な低成長と税収の縮小に見舞われている。いずれも低体温症によるものだ」(湯元氏)
政策を実行するための資金を確保しようとしても税収が不足している。それをカバーするために国債を増発すれば、償還負担が重くなる。その結果、低成長に至る。デフレという名の低体温症はこの悪循環を慢性化させる。
10月30日に日本銀行が公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も、日本の潜在成長率を「0%台半ば」とした。景気後退でモノが売れず、企業の設備投資が伸び悩んだためで、4月時点の「1%前後」から下方修正した。
■脱出策は市場拡大
脱出策はあるのか。
湯元氏は「先行きの成長を期待させる政策があれば脱出可能だ」と話す。そのひとつが、小泉内閣で着手した「官から民へ」「中央から地方へ」「貯蓄から投資へ」など構造改革の徹底だ。「国のムダを省き効率的にすることから展望が開ける」と指摘する。
また国内の市場縮小の底流にある人口減少に対応するため、「外国人労働者の導入も本気で検討する必要がある」という。
関西大大学院会計研究科の宮本勝浩教授も市場拡大策を練るべきだと話す。「民主党政権が掲げる富の再配分は重要だが、成長産業を後押しする規制緩和を集中的に進めるなど、経済の成長戦略がなければ低体温症から抜け出すのは難しい。金融政策も重要だ」と指摘する。
大手メーカー幹部は「多くの輸出企業は円高リスクに対応するため体質強化を続けてきた。日本政府が慢性的なデフレへの対策を怠れば、企業は海外に出ていくしかない」と話す。そのうえで、こう言い切った。
「政策はいろいろと検討の余地があるだろう。しかしもっとも大事なのは、低体温症から抜け出す、という固い意志だ」
(MSN産経ニュースより転載)
日本経済が低体温症に陥っているという状況認識は、まあ良いとして、
>国債を増発すれば、償還負担が重くなる。その結果、低成長に至る。
という論理展開は、はっきり言って滅茶苦茶です。
そもそも、償還負担云々と書いている時点で、国の債務と個人や私企業の債務の区別が全くついていません。
三橋貴明氏や廣宮孝信氏の書籍・ブログをほんの少しでも読んだ事がある人なら、もうお分かりのように、現在の日本国国債は100%円建てであり、外貨建てではありません。そのメリットは、何と言っても延々と繰り延べ(ロールオーバー)出来る点にあります。
つまり、償還負担が重くなる事など、経済成長する限り、これっぽっちも起こらないのです。
さらに、国債増発(財政出動)→償還負担が重くなる→低成長という流れは、全くもってワケワカメです。普通なら、国債増発(財政出動)→GDPが持ち直す→経済成長となるのではないでしょうか?
それなのに、景気対策で財政出動しておきながら、どうして低成長(≒不景気)となるのか、論理が飛躍しすぎていて、付いていけません。
思うに、この行燈記事を書いた記者は、
民主党政権は嫌だ!→鳩山内閣がする事なす事全て批判してやれ→「平成22年度当初予算95兆円」は格好の標的→「民主党政権で財政破綻」キャンペーン
という思考回路となっているのではないでしょうか?
こんな脳内フィルターをかけて記事を書くなら、「自民党政権で財政破綻」キャンペーンの朝日新聞と何ら変わりがありません。
そして、挙句の果てに、
「デフレスパイラルから抜け出すために、”官から民へ””中央から地方へ””貯蓄から投資へ”など構造改革を徹底しろ!」
とホザきます。
なまくらは、この竹中式思考回路に茫然自失してしまったので、反論は三橋さんにしていただくことにします。↓
「主問題経済下(三橋注:通常経済下)においては、リカードの比較優位説が作動し、貿易が正当化され、グローバリゼーションが正しい政策になります。このときは、グローバリゼーションにより全てのプレーヤーが豊かになります。
一方、双対問題経済下(三橋注:恐慌経済下)においては、リカードの比較優位説は作動せず、貿易は正当化されず、鎖国が正しい政策になります。このときグローバリゼーションを行えば、すべてのプレーヤーが貧しくなります。(経済学はなぜ間違えるのか P146)」
(中略)
「いや。このまま自由貿易を続け、グローバリゼーションを推し進めれば、あなた方の問題はきっと解決します」
などと言えるはずがありません。自由貿易を続けても、中国などからどんどん安い製品が入ってくるだけで、国内の雇用環境は確実に悪化します。
もちろん、アメリカ政府は財政出動を行い、国内の景気の下支えをしようとするでしょう。しかし、政府が「国民のお金(あえて血税とは書きませんが)」を使い、国内に需要を作り出したとして、自由貿易を続けると、折角苦労して創出した需要を海外諸国に奪われる(輸入増、という形で)結果になってしまうのです。輸入とは、その国のGDPの「控除項目」です。輸入が一方的に増えれば、GDPがその分だけ減少し、国内の需要が奪われてしまいます。
はい。重要な部分なので、しつこく書きます。
「輸入とは、自国の需要を他国に奪われることです。そして輸出とは、他国の需要を奪い取る行為なのです」
(中略)
アメリカの場合は(日本もですが)、ここに「グローバル化されてしまった金融」という問題が加わります。すなわち、上記の読売の記事に登場した人々を助けようと、政府が国内にお金を大量に供給しても、それが金融のグローバルプレーヤー(要はウォール街)により、海外投資に持ち出されてしまうという問題です。
(中略)
グローバル化の進展は、通常経済のフェーズでは有利に働きますが、恐慌経済下では国内の雇用や需要が奪われ、不利に働きます。実践主義の戦略家ぞろいのアメリカが、この事実に気がついていないはずがありません(と言うか、政府首脳部が気がつかずとも、議員は気がつきます)。そろそろ表立って「保護主義」の議論が始まるのではないかなあ、と、予感がしています。
(新世紀のビッグブラザーへBlog「グローバリズムの罠 その1 その2」より一部転載)
構造改革路線が目指す先にはクローバリズムがあるので、産経への批判は上記ブログで既に行われている事がお分かりいただけたでしょうか?
その前にも、
今年、様々な新聞関係者とお会いしましたが、誰もが口をそろえたように、
「産経新聞は名前に『経済』が入っているが、おそらく最も経済について無知な新聞社だ」
と言うのも無理もありません。(但し、面白いことに、皆必ず「田村秀男さんは除くが・・・」と付け加えるのです)
とありましたが、思わず「確かに」と頷いてしまいました。
産経新聞よ、折角、外交・安全保障面で素晴らしい記事を書くのだから、そっちに注力して、経済・財政問題は担当をリストラして田村秀男さん一人に任せてしまいなさい。
そうした方が、きっと早く業績回復できますから。
立ち位置としては「やや保守寄りの中立」であり、ナベツネ支配の読売新聞よりもはるかに好感が持てます。
ただし、なまくらが「おや?」と思うスタンスも幾つかあります。
一つは「親米」を追求し過ぎて自主独立の気概を失くしている事、もう一つは「小泉構造改革マンセー」な点です。
何でもかんでも「自己責任」論を展開し、「小さな政府」、「規制緩和」、「官から民へ」という米共和党的発想を紙面にぶちまける姿は、「親米紙ここにあり」と言っているようで、正直辟易する事もあります。
先日も、このような連載記事を臆面もなく掲載していました。
【デフレの恐怖】(下)日本経済は「低体温症」 頼みは構造改革と成長戦略
(前略)
■続く物価下落
「日本経済が陥っている状況は、まさに低体温症だ」と話すのは、日本総合研究所の湯元健治理事だ。
経済で体温と形容される物価は、このところ下落を続けている。9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2・3%の下落で、7カ月連続の前年割れだ。
「先進国では2~3%成長するのが平熱だが、日本はせいぜい1~2%で、悪ければマイナスになる。現状では恒常的な物価下落の状況にあるうえ、慢性的な低成長と税収の縮小に見舞われている。いずれも低体温症によるものだ」(湯元氏)
政策を実行するための資金を確保しようとしても税収が不足している。それをカバーするために国債を増発すれば、償還負担が重くなる。その結果、低成長に至る。デフレという名の低体温症はこの悪循環を慢性化させる。
10月30日に日本銀行が公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も、日本の潜在成長率を「0%台半ば」とした。景気後退でモノが売れず、企業の設備投資が伸び悩んだためで、4月時点の「1%前後」から下方修正した。
■脱出策は市場拡大
脱出策はあるのか。
湯元氏は「先行きの成長を期待させる政策があれば脱出可能だ」と話す。そのひとつが、小泉内閣で着手した「官から民へ」「中央から地方へ」「貯蓄から投資へ」など構造改革の徹底だ。「国のムダを省き効率的にすることから展望が開ける」と指摘する。
また国内の市場縮小の底流にある人口減少に対応するため、「外国人労働者の導入も本気で検討する必要がある」という。
関西大大学院会計研究科の宮本勝浩教授も市場拡大策を練るべきだと話す。「民主党政権が掲げる富の再配分は重要だが、成長産業を後押しする規制緩和を集中的に進めるなど、経済の成長戦略がなければ低体温症から抜け出すのは難しい。金融政策も重要だ」と指摘する。
大手メーカー幹部は「多くの輸出企業は円高リスクに対応するため体質強化を続けてきた。日本政府が慢性的なデフレへの対策を怠れば、企業は海外に出ていくしかない」と話す。そのうえで、こう言い切った。
「政策はいろいろと検討の余地があるだろう。しかしもっとも大事なのは、低体温症から抜け出す、という固い意志だ」
(MSN産経ニュースより転載)
日本経済が低体温症に陥っているという状況認識は、まあ良いとして、
>国債を増発すれば、償還負担が重くなる。その結果、低成長に至る。
という論理展開は、はっきり言って滅茶苦茶です。
そもそも、償還負担云々と書いている時点で、国の債務と個人や私企業の債務の区別が全くついていません。
三橋貴明氏や廣宮孝信氏の書籍・ブログをほんの少しでも読んだ事がある人なら、もうお分かりのように、現在の日本国国債は100%円建てであり、外貨建てではありません。そのメリットは、何と言っても延々と繰り延べ(ロールオーバー)出来る点にあります。
つまり、償還負担が重くなる事など、経済成長する限り、これっぽっちも起こらないのです。
さらに、国債増発(財政出動)→償還負担が重くなる→低成長という流れは、全くもってワケワカメです。普通なら、国債増発(財政出動)→GDPが持ち直す→経済成長となるのではないでしょうか?
それなのに、景気対策で財政出動しておきながら、どうして低成長(≒不景気)となるのか、論理が飛躍しすぎていて、付いていけません。
思うに、この行燈記事を書いた記者は、
民主党政権は嫌だ!→鳩山内閣がする事なす事全て批判してやれ→「平成22年度当初予算95兆円」は格好の標的→「民主党政権で財政破綻」キャンペーン
という思考回路となっているのではないでしょうか?
こんな脳内フィルターをかけて記事を書くなら、「自民党政権で財政破綻」キャンペーンの朝日新聞と何ら変わりがありません。
そして、挙句の果てに、
「デフレスパイラルから抜け出すために、”官から民へ””中央から地方へ””貯蓄から投資へ”など構造改革を徹底しろ!」
とホザきます。
なまくらは、この竹中式思考回路に茫然自失してしまったので、反論は三橋さんにしていただくことにします。↓
「主問題経済下(三橋注:通常経済下)においては、リカードの比較優位説が作動し、貿易が正当化され、グローバリゼーションが正しい政策になります。このときは、グローバリゼーションにより全てのプレーヤーが豊かになります。
一方、双対問題経済下(三橋注:恐慌経済下)においては、リカードの比較優位説は作動せず、貿易は正当化されず、鎖国が正しい政策になります。このときグローバリゼーションを行えば、すべてのプレーヤーが貧しくなります。(経済学はなぜ間違えるのか P146)」
(中略)
「いや。このまま自由貿易を続け、グローバリゼーションを推し進めれば、あなた方の問題はきっと解決します」
などと言えるはずがありません。自由貿易を続けても、中国などからどんどん安い製品が入ってくるだけで、国内の雇用環境は確実に悪化します。
もちろん、アメリカ政府は財政出動を行い、国内の景気の下支えをしようとするでしょう。しかし、政府が「国民のお金(あえて血税とは書きませんが)」を使い、国内に需要を作り出したとして、自由貿易を続けると、折角苦労して創出した需要を海外諸国に奪われる(輸入増、という形で)結果になってしまうのです。輸入とは、その国のGDPの「控除項目」です。輸入が一方的に増えれば、GDPがその分だけ減少し、国内の需要が奪われてしまいます。
はい。重要な部分なので、しつこく書きます。
「輸入とは、自国の需要を他国に奪われることです。そして輸出とは、他国の需要を奪い取る行為なのです」
(中略)
アメリカの場合は(日本もですが)、ここに「グローバル化されてしまった金融」という問題が加わります。すなわち、上記の読売の記事に登場した人々を助けようと、政府が国内にお金を大量に供給しても、それが金融のグローバルプレーヤー(要はウォール街)により、海外投資に持ち出されてしまうという問題です。
(中略)
グローバル化の進展は、通常経済のフェーズでは有利に働きますが、恐慌経済下では国内の雇用や需要が奪われ、不利に働きます。実践主義の戦略家ぞろいのアメリカが、この事実に気がついていないはずがありません(と言うか、政府首脳部が気がつかずとも、議員は気がつきます)。そろそろ表立って「保護主義」の議論が始まるのではないかなあ、と、予感がしています。
(新世紀のビッグブラザーへBlog「グローバリズムの罠 その1 その2」より一部転載)
構造改革路線が目指す先にはクローバリズムがあるので、産経への批判は上記ブログで既に行われている事がお分かりいただけたでしょうか?
その前にも、
今年、様々な新聞関係者とお会いしましたが、誰もが口をそろえたように、
「産経新聞は名前に『経済』が入っているが、おそらく最も経済について無知な新聞社だ」
と言うのも無理もありません。(但し、面白いことに、皆必ず「田村秀男さんは除くが・・・」と付け加えるのです)
とありましたが、思わず「確かに」と頷いてしまいました。
産経新聞よ、折角、外交・安全保障面で素晴らしい記事を書くのだから、そっちに注力して、経済・財政問題は担当をリストラして田村秀男さん一人に任せてしまいなさい。
そうした方が、きっと早く業績回復できますから。