2011年01月03日

書評「田母神国軍」

 先月から、買うだけ買って放置していた書籍・雑誌・新聞等を少しづつ読み始めたのですが、新規購入の方がペースが速く、本棚が限界に近付いているなまくらです。(と言いつつ、先日も「天皇論」の続編など4冊をまとめ買いして悦に浸ってます(笑)

 さて、カンチョクト(管直人)と汚沢の新年祝賀会召集合戦など、どうでもいいニュースばかりで書くことが無いので、しばらくは読書感想文でも掲載しようかと思います。

 第1回目は、「そこまで言って委員会」でネクスト防衛大臣に推薦されたこの方、

 田母神俊雄著「田母神国軍 ~たったこれだけで日本は普通の国になる」

書評「田母神国軍」

 自他共に認める「親日派」で、これ以上にない安保専門家である氏の最新作で、「日本が真の意味で独立国になるために、独自の軍隊を持つ場合、一体幾ら掛かるのか、をきちんと試算した(「はじめに」より)」初の書籍です。
 (どうでもいいけど、どうしても「田母 神国軍」と読んでしまう、なまくらです。)

 まずは第1章で尖閣問題や半島有事をモデルケースに有事シミュレーションを行い、現在の制度で日本の領土や国民を守ることは非常に困難であることを指摘しています。
 第2章では増長著しい中共の実態に触れ、日本が中共にとって非常に目障りな位置にあること、中共の軍事力を背景にした外交の仕方などを我々に教えてくれています。
 一方で同盟関係にあるアメリカがいざという時助けてくるか、と言うと必ずしもそうではないことを第3章で述べられています。そこでは、「いつまでもアメリカに頼り続けてくれる東アジア」がアメリカの対東アジア戦略であることが書かれ、日本の防衛情報がアメリカに独占され続けることが、アメリカの国益に繋がっている事実を暴露しています。
 しかし、氏が決して嫌米でないことは、第4章における渡米経験からも分かります。一方で、装備調達など日米お互いの国益がぶつかり合う場面では、しっかり日本の主張を行うべきことははっきり書いています。
 そしていよいよ本題の第5章ですが、20年で必要な装備を揃えるのに必要な概算額を、米軍が実際に使った調達費などを参考に試算されています。
 ここで言う「必要な装備」とは、原子力空母3隻とその艦載機、戦略原潜(核ミサイル含む)と護衛用の攻撃型原潜をそれぞれ4隻ずつ、既存の輸送機C-2をベースにした戦略爆撃機10機、巡航ミサイル搭載のイージス艦3隻、となっています。
 これらを20年で揃えるのに必要な額は大体15兆円、年間最大で1.4兆円あまり、ということです。自衛隊員の増員による人件費の増を含めても、子ども手当の3分の2の予算で達成できる、という結果になりました。

 しかし、実際掛かる費用としては、これだけではないでしょう。原子力空母などの建造には、現在ある造船所を大幅に改修しないと出来ないでしょうし、核武装するなら、実験場の整備も必要になります。さらに、核保有には国際政治上のハードルが幾つも待ち構えています。
 それらを考慮に入れないなど、多少大雑把な感じは否めませんが、日頃保守派が叫ぶ「防衛力の強化」に掛かる費用が具体的に出てきたことは、議論のたたき台として高く評価できると思います。
 ただ、「20年で必要な装備を揃える」という前提条件には、若干物足りなさを覚えます。果たして、中共がそれまで待ってくれるでしょうか。
 来年には中共の国家主席が胡錦濤から習キンピラに変わります。キンピラは軍の信頼も厚い上、反日教組の江沢民に近いとされています。
 中国バブルの崩壊後に予想される経済混乱と高まる政権への不満のはけ口として、対日圧力を更に強めることは容易に想像できます。最悪の場合、尖閣諸島への軍の上陸・実効支配の開始、ということも想定されます。
 20年どころか、2年以内に起きる可能性がある事態に、何らかの対処が必要になるでしょう。

 少なくとも、上記の装備品の内、攻撃型原潜は米軍から退役した原潜を購入もしくは貸与してもらい、配備するべきだと思います。
 そして、自前の原潜が完成するまでの間、尖閣や宮古島近海に遊弋させ、抑止力としつつ、隊員の訓練や装備への習熟、国産原潜へのフィードバックを行えば良いと思います。

 また、この本で最初に自衛隊を取り巻く法律などの体制に不備があることを指摘しながら、それへの対処が書かれていないのでは、片手落ちではないか、と感じました。
 いくら高性能の兵器を揃えても、「法令に書かれていないことは総て禁止事項」という現行の体制では、宝の持ち腐れです。尖閣に人民解放軍が上陸しても、前線に出撃するのが沖縄県警で、自衛隊の空母は港に待機、なんてシャレにもなりません。
 このあたりは、核保有の実現性とともに、氏の次作に期待、というところでしょうか。

 しかし、それでも不安は残ります。例え法令を整備し、装備も調達したところで、核のボタンを持つのが「自分が自衛隊の最高司令官だとは知らなかった」という総理では話になりません。
 一刻も早く、「親日派」国会議員が総理・閣僚になる必要があるのは、言うまでもありません。



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Posted by なまくら at 15:25│Comments(0)書評
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