2013年01月02日

序章(1)

 さて、昨日お知らせしたとおり、暫くは政治問題から離れて、小説を書いていきたいと思います。

 時代考証も不十分で、かつ拙い文章になるとは思いますが、一個人の趣味として御容赦下さいませ。

 尚、次回以降はカテゴリーを「趣味」に変えて書きたいと思いますので、みやchanのトップページから来訪される方は御注意下さいませ。

 では・・・



序章(1)




 その国は、東洋の果てにある。

 ユーラシア大陸北東部を囲む首飾りのように存在する列島をもって、国土と成す。気候は概ね高温多湿の温帯にありながら、亜熱帯から亜寒帯まで様々、世界有数の豪雨地帯があれば、世界一の豪雪地帯さえもある。プレートの境界域に位置する国土は地震や火山が多く、台風と呼ばれる熱帯性低気圧の通り道でもある。世界的に見て、これほど多様な災害に襲われる国は少ないだろうが、それにもかかわらず、人々は何千年も前から根気よく荒れた土地を耕して、稲を植え、肥沃な国土につくり変えようと努力してきた。

 一方、海によって大陸から程良く隔てられていたおかげで、この国は周辺国からの侵略を免れつつ、周辺文明や技術を程良く取り入れることが出来た。

 このような条件下、何時しかこの国には独自の文明が発達し、独自の皇帝を戴くようになった。やがて、西洋諸国から外圧を受け始めたこの国は、自ら近代国家へと脱皮する努力をし、成し遂げたのだが、実のところ、この国には神話から数えて2600年近い歴史がある。

 そんな悠久の歴史を持つこの国を、国民はこう呼んでいた。

 大日本帝國

と。



 その首都にある民家の一室で、一人の男が静かに息を引き取ろうとしていた。

 ほんの数か月前まで、短髪で豊かな口髭を蓄え、生気に溢れていたのが、今は見る影もない。

 男の名は桂太郎。この若き立憲君主国における第15代内閣総理大臣である。

 彼は既に昏睡状態であったが、夢の中でかつての栄華極まる日々を思い出していた。それは日本を未曾有の国難から救い、元老政治からの脱却を実現出来た、あの輝かしい日々である。



 彼の初めての内閣は、12年前の明治34(1901)年6月2日、前月に崩壊した第4次伊藤内閣の後継として誕生した。この時代の内閣総理大臣は形式上、天皇が任命する宰相であったが、実態は明治維新の功労者、即ち元老らが選んだ者がその職に就いていた。元老はこの他にも、元老会議の席で重要国務審議を行っており、実質的に国政運営を担う一機関となっていた。

 桂を選んだのは元老であり、第3代、第9代内閣総理大臣を務めた山縣有朋である。桂は世間から、山縣の一の子分と看做されていた。その為、彼の内閣はしばしば「小山縣内閣」「次官内閣」などと揶揄されていたのである。

 しかしその後、彼の政治上の地位を大きく向上させる事件が起こった。日露戦争である。



 ニコライⅡ世率いるロシア帝国は、北清事変(所謂「義和団の乱」)以降満州を占領し、日本政府(第4次伊藤内閣)は正式に抗議していた。日本はさらに桂内閣において日英同盟を締結、両国でロシアに圧力を加えることで撤兵を約束させた。

 しかし、ロシアは第1次撤兵を履行したものの、第2次撤兵は行わず、しかも第1次撤兵も見せかけに過ぎないことが判明、それどころか韓国(大韓帝国)領内に軍事拠点の建設を開始したのである。

 こうしたロシアの動きに対し、日本は直接交渉を開始した。明治36(1903)年7月のことである。

 韓国における日本の優越権をロシアに認めさせる代わりに、満州におけるロシアの優越権を認めること(所謂「満韓交換論」)を軸に交渉を行おうとする日本政府に対し、ロシアはなるべく交渉を引き伸ばし、その間に軍を増強、とりわけ旅順要塞の強化をして、満州支配を強めようとしていた。8月には満州の旅順に極東総督府を新設し、満州の本格的植民地化に乗り出した。10月には満州に陸軍を増強し、海軍も戦艦を含む軍艦を極東に回航するなど、着々と軍備を強化していった。つまり交渉は単なる時間稼ぎに過ぎなかったのである。

 日露の衝突は最早、不可避となっていた。明治37(1904)年2月4日、御前会議にて国交断絶が決定、ここに日露戦争が勃発したのである。





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Posted by なまくら at 09:51│Comments(0)創作
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