2013年01月19日

第1章 ポーツマス会議 5.手詰まり

 午後からの討議は第10条と第11条、即ちロシア軍艦の引き渡し要求とロシア海軍力制限に関してだったが、これも折り合いが付かず、結論は持ち越しになった。

 「明朝、第11条の意見書を交換し、第12条の討議を行いましょう。明後日土曜日と日曜日は休会とし、月曜日午後3時に最後の会議を開きたいと思います」

 ウィッテの提案を小村は承諾し、散会となった。



 ホテルで夕食を済ませた小村らは、取り敢えずその日の会議結果等を本国に打電した後、高平副全権らと協議を始めた。

 「第12条は兎も角、妥結していない残りの4条件については、ロシア側は受諾しないだろう」

 小村は疲れた表情で高平らに語った。

 ロシア政府がウィッテ達に対し、会議を即中止して帰国せよ、と命令しているという情報ももたらされていた。

 最終会議まで、あと4日しかない。

 小村は電信主任に、次のような内容の電報を本国、それからニューヨークの金子宛に発信させた。

 「樺太割譲と償金について、ロシア側は絶対に拒絶の態度を崩さないと判断される。その為、抑留艦艇引き渡しと海軍力制限の2条件を撤回し、樺太及び償金の受諾を強く求めるが、それでもロシア側が受け容れる望みは殆ど無い。ロシア側はニューヨークに引き揚げる模様なので、日本側もこの地を離れ、ルーズベルトの最後の手段に任せようと思う。それも殆ど効果は期待出来ない情勢で、その時には遺憾ながら戦争継続もやむを得ない。もし、これについて指示あるならば、21日月曜日前に発信されたし」



 ニューヨークの金子に電報が届いたのは、その日の深夜だった。

 驚いた金子は、夜明けと共に急いでルーズベルト大統領の別荘に向かい、電報を大統領に見せた。

 「わたしからロシア皇帝に親電を送り、譲歩の精神で会議を進めるよう勧告する。ただしウィッテの立場も考え、まずはローゼン副全権をここに招いて、そのことを伝えよう」

 ルーズベルトは暫く思案した後、こう言って秘書官にウィッテ宛の電報を打たせた。





 その頃、ウィッテも本国政府に指示を迫っていた。

 「償金要求はあくまで拒否するが、サハリン割譲の件については、我が国が同島を領有する以前に日本が権利を持っていたこともあり、割譲も考えられる。その場合は、同島を軍事基地化しないことを条件とする・・・・・・」



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Posted by なまくら at 14:45│Comments(0)創作
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