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Posted by みやchan運営事務局 at

2011年10月23日

大前研一氏 懐かしき改革原理主義者

 久しぶりに管理画面を覗いて見ると、ほぼ一桁で推移しているUU数(1月以上更新してないから当然ですよね)が、先日21日だけ、100人越えてる・・・一体何があったんでしょうか??(どうせ、みやchanのミスでしょうが)


 さて、政治ネタも何となく白けるので、たまには読書感想文でも。
 相方に触発されて本の処分を決意したものの、一度買ったものは中々手放せない性分で、取りあえず内容の要約をメモしつつ、もう一度見返しながら処分を始めたところです。
 その第一弾は5年前に購入した大前研一氏著「ロウアー・ミドルの衝撃」
 小泉改革を受けて「格差拡大」だの、「下流社会」だのがキーワードになっていたのが当時のご時勢であり、SAPIOの常連執筆陣の一人である大前氏の本に何となく惹かれて購入した本です。

 内容としては、「成熟した少子高齢社会の日本では、『総中流社会の崩壊』と『所得階層の二極化』がおこるのは当然であり、構造的な問題であるから、いくら政府が景気対策をしたりマネーを増やしても景気回復しないし、国民は幸せになれない。むしろ、中流から転落した『ロウアー・ミドル層(年収300~600万円の層)』は持ち家や車、教育などに無駄な費用は掛けず、『国産信仰』などの偏見も捨て、世界中に溢れる安くて質の良いモノを見定めて賢く消費すべきだ。また、政府に徹底した規制緩和と政府リストラを要求し、世界中に溢れる安くて質の良いモノが手に入る環境づくりをさせるべきで、そうしなければ積み上がる一方の国債残高により、日本は破綻するぅ~!!」
・・・とまあ、どこかの党が金切り声で叫んでいる主張そのまんまの事を書いていました。
 そしてキーワードは「生活者重視」。「国民の生活が第一」と仲が良さそうなフレーズですこと(笑)

 しかし、今考えると突っ込みどころ満載なんですよね。
 例えば、氏は「日本のロウアー・ミドルクラスは、世界的に見ればアッパークラスである。それがゆとりのない生活をしているのは偏見や規制のせいであり、これを解消すればゆとりある生活を手に入れられる」と言います。
 しかし、流通の効率化は兎も角、海外に生産拠点を移して「安くて質の良いモノ」を作って輸入するのでは、国内の雇用が失われ、ロウアー・ミドルクラスはさらにその下のロウアークラスへと転落するのは容易に想像がつきます。職や収入が年を追うごとに減るような状況で、どうやって「ゆとりある生活」を手に入れることができるのか、教えてほしいものです。

 また、氏は「海外に土地を確保してそこで作物を育て、輸入すれば農産物の値段が下がり、生活者のコストが下がるから良い。都市近郊の農地も”解放”され、土地の値段も下がるからなお良い。中山間地の農家が潰れる?んなもん、街の商店が潰れるのと何が違う?(=救済の必要なし)」とも書いています。
 そもそも、農業=農産物製造所 程度にしか考えていないから、こういう発想になるんでしょうね。農業の持つ複合的機能なんか、まるで頭にないようです。

 他にも、ノキアを生んだフィンランドを例に、IT教育や英語教育、企業家教育などを重視するよう訴えていますが、北欧やアメリカなどで実際に起業した人が同世代の内の何割か、などちゃんと裏づけとなるデータを取っているんでしょうかね?
 現在の日本の学生の内、8割も9割もの子供たちが将来起業して成功する、というなら話は別ですが、まずそんなことは起こらないでしょう。
 大前氏の「起業強制」教育では、意思と実力のあるほんの一握りの学生が成功するだけで、残りの大半は今以上に悲惨な状況におかれそうな気がしてなりません
 そもそも、「英語は共通語なんだから、使える英語を身に付けさせるのは当たり前」と言いながら「国を繁栄させる『突出した個人』とは、指導力、発想力などの他、各国の文化に造詣が深く、倫理を駆使して仕事を進められる人物」と書く。母国語以外の勉強に時間を割かれた学生が、どうやって自国のみならず各国の文化の理解を深められるのか、具体的な教育のロードマップを是非示してほしいものです。

 こうして時を経て読み返してみると、どうやら氏の考え方は「現時点で最適な解」を見つけようとしているだけで、「将来、少なくとも子の世代にとって最適な解」を見つける努力が微塵も感じられないのです。
 税制改正案や政府リストラ策など、今でも面白いと思える提案も無くはないのですが、全体的なものの見方に、過去の先祖から今の自分、そして未来の子孫へと連なる「1本の縦軸」が見えないのです。どうしても。
 また、「○○(とある改革案)すれば発展する、良くなる、幸せになれるはずだ」「だから○○すべきだ」という断定のフレーズがやたら目に付くのも眉唾です。
 実際に氏の改革案を実行したとして、それが目指す方向とは違った結果を生み出しても「良くならないのは改革が足らないからだ!!」とか言われそうな気がするからです。まるで新興宗教かカルトのようですね。


 ここ3年あまり、三橋貴明氏の著書を読み続けているなまくらにとって、大前氏は既に「過去の人」になったようです。「ああ、こういう改革案を本気で信じた時期もあったなぁ」としみじみ思うだけの存在に成り下がった大前氏の著書を再び手に取る日は、恐らく来ないでしょう。  


Posted by なまくら at 01:43Comments(0)書評

2011年01月03日

書評「田母神国軍」

 先月から、買うだけ買って放置していた書籍・雑誌・新聞等を少しづつ読み始めたのですが、新規購入の方がペースが速く、本棚が限界に近付いているなまくらです。(と言いつつ、先日も「天皇論」の続編など4冊をまとめ買いして悦に浸ってます(笑)

 さて、カンチョクト(管直人)と汚沢の新年祝賀会召集合戦など、どうでもいいニュースばかりで書くことが無いので、しばらくは読書感想文でも掲載しようかと思います。

 第1回目は、「そこまで言って委員会」でネクスト防衛大臣に推薦されたこの方、

 田母神俊雄著「田母神国軍 ~たったこれだけで日本は普通の国になる」



 自他共に認める「親日派」で、これ以上にない安保専門家である氏の最新作で、「日本が真の意味で独立国になるために、独自の軍隊を持つ場合、一体幾ら掛かるのか、をきちんと試算した(「はじめに」より)」初の書籍です。
 (どうでもいいけど、どうしても「田母 神国軍」と読んでしまう、なまくらです。)

 まずは第1章で尖閣問題や半島有事をモデルケースに有事シミュレーションを行い、現在の制度で日本の領土や国民を守ることは非常に困難であることを指摘しています。
 第2章では増長著しい中共の実態に触れ、日本が中共にとって非常に目障りな位置にあること、中共の軍事力を背景にした外交の仕方などを我々に教えてくれています。
 一方で同盟関係にあるアメリカがいざという時助けてくるか、と言うと必ずしもそうではないことを第3章で述べられています。そこでは、「いつまでもアメリカに頼り続けてくれる東アジア」がアメリカの対東アジア戦略であることが書かれ、日本の防衛情報がアメリカに独占され続けることが、アメリカの国益に繋がっている事実を暴露しています。
 しかし、氏が決して嫌米でないことは、第4章における渡米経験からも分かります。一方で、装備調達など日米お互いの国益がぶつかり合う場面では、しっかり日本の主張を行うべきことははっきり書いています。
 そしていよいよ本題の第5章ですが、20年で必要な装備を揃えるのに必要な概算額を、米軍が実際に使った調達費などを参考に試算されています。
 ここで言う「必要な装備」とは、原子力空母3隻とその艦載機、戦略原潜(核ミサイル含む)と護衛用の攻撃型原潜をそれぞれ4隻ずつ、既存の輸送機C-2をベースにした戦略爆撃機10機、巡航ミサイル搭載のイージス艦3隻、となっています。
 これらを20年で揃えるのに必要な額は大体15兆円、年間最大で1.4兆円あまり、ということです。自衛隊員の増員による人件費の増を含めても、子ども手当の3分の2の予算で達成できる、という結果になりました。

 しかし、実際掛かる費用としては、これだけではないでしょう。原子力空母などの建造には、現在ある造船所を大幅に改修しないと出来ないでしょうし、核武装するなら、実験場の整備も必要になります。さらに、核保有には国際政治上のハードルが幾つも待ち構えています。
 それらを考慮に入れないなど、多少大雑把な感じは否めませんが、日頃保守派が叫ぶ「防衛力の強化」に掛かる費用が具体的に出てきたことは、議論のたたき台として高く評価できると思います。
 ただ、「20年で必要な装備を揃える」という前提条件には、若干物足りなさを覚えます。果たして、中共がそれまで待ってくれるでしょうか。
 来年には中共の国家主席が胡錦濤から習キンピラに変わります。キンピラは軍の信頼も厚い上、反日教組の江沢民に近いとされています。
 中国バブルの崩壊後に予想される経済混乱と高まる政権への不満のはけ口として、対日圧力を更に強めることは容易に想像できます。最悪の場合、尖閣諸島への軍の上陸・実効支配の開始、ということも想定されます。
 20年どころか、2年以内に起きる可能性がある事態に、何らかの対処が必要になるでしょう。

 少なくとも、上記の装備品の内、攻撃型原潜は米軍から退役した原潜を購入もしくは貸与してもらい、配備するべきだと思います。
 そして、自前の原潜が完成するまでの間、尖閣や宮古島近海に遊弋させ、抑止力としつつ、隊員の訓練や装備への習熟、国産原潜へのフィードバックを行えば良いと思います。

 また、この本で最初に自衛隊を取り巻く法律などの体制に不備があることを指摘しながら、それへの対処が書かれていないのでは、片手落ちではないか、と感じました。
 いくら高性能の兵器を揃えても、「法令に書かれていないことは総て禁止事項」という現行の体制では、宝の持ち腐れです。尖閣に人民解放軍が上陸しても、前線に出撃するのが沖縄県警で、自衛隊の空母は港に待機、なんてシャレにもなりません。
 このあたりは、核保有の実現性とともに、氏の次作に期待、というところでしょうか。

 しかし、それでも不安は残ります。例え法令を整備し、装備も調達したところで、核のボタンを持つのが「自分が自衛隊の最高司令官だとは知らなかった」という総理では話になりません。
 一刻も早く、「親日派」国会議員が総理・閣僚になる必要があるのは、言うまでもありません。  


Posted by なまくら at 15:25Comments(0)書評